カナカナ表記のクリエイターは、クリエイターという肩書きがよく似合う。個性的な形のサングラスもよく似合う。ということで、今回は中田ヤスタカをタグクラウド化した。次のタグクラウドは、彼のキャリアを区分せずに、タグクラウドにしてキラキラさせたものである。

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自身のインタビューでは「シンガーソングライターという自覚がない」「声が入ってる音楽を作ってる感じ」と答えているものの、capsulePerfumeきゃりーぱみゅぱみゅも、作詞作曲 中田ヤスタカである。それぞれを改めて捉え直すことで、どうやって異なる三種のフレイバーを使い分けているのか。何を繰り返すことによって、テクノポップを加速させているのか。何を削ぎ落とすことで、洗練されているのか。タグクラウドから検証したい。歌詞の中で頻出単語の上位30位までを解析したのが、以下のランキングである。

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capsule(カプセル)の中に入っていたもの
capsuleを改めて聞いてみて、驚いた。のちに、Perfumeやきゃりーぱみゅぱみゅに続くテクノポップの音楽的要素が全て入っていた。音楽的冒険はすでにここから始まっていた。しかし、他と比べて、ポップさに欠ける。ポップなフレーズのリフレインがまだ存在しない。自分がいる場所との近似値が少ない。お祭りの要素がない。まるで、音楽について考えるために、音楽を作っているように思える。
純粋な音楽というのは、言葉の介在が不要なものだ。全く取り留めもないアイデアだ。それをまずは凝固させるために、他者の介在のない場所で音楽にしてモニタリングする。capsuleには、そんな効用があるに違いない。

リフレインと近未来:Perfume
Perfume。テクノポップとアイドル性をあわせもつ、アーティストとしての絶対の地位を欲しいままにしている。これを映像・技術・ダンス・衣装・美術の面から支えるクリエイティブチームの常ならぬ努力と才能は目を見張るものがあるが、ここはタグクラウド。言葉だけでPerfumeを紐解くことにしよう。まず気になるのが、"ing"を多用していることだ。彼女たちが司る近未来のイメージは、もはや専売特許の様相を呈しているのだが、そのイメージの根幹を為すのがこの"ing"だと僕はにらんだ。未来と近未来は、似て非なるもの。未来は、いつまでもやって来なくても誰も文句を言わない。「未来の話だからね」と、言ってしまえばそれまでの話。絵空事でもいい未来に対して、近未来は現在との同期が必要である。少しでも「わかる」要素がないと、それは近未来と呼べるものにはならない。また、ヤスタカのキャリアの中でも、Perfumeから顕著なのが歌詞のリフレインだ。ポリリズムにせよ、チョコレイト・ディスコにせよ、曲名そのものを連呼するというわかりやすさが際立っている。連呼される言葉は、なんとなくわかるし、懐かしい、どこか未来的なものだ。近未来というパッケージによってはじめて生まれる説得力も、あるのだと思う。新曲は近未来ではなく『未来のミュージアム』というタイトルであるが、それは近未来をPerfume自体が担保しているから成立する未来なのであって、他の誰かでは成立しない未来なのだと思う。そう思わせる、洗練がある。

まるで観光地:きゃりーぱみゅぱみゅ
きゃりーぱみゅぱみゅを最初に見たとき、独自の言語を生み出すことで個性を自らこしらえてきた歴代のアイドルの姿を思い出した。それは、のりぴーこと酒井法子であったり、篠原ともえであったりするのだが、彼女の言動とDAMチャンネルを垣間見るにつれ、その印象は完全に消え去った。彼女は、ちゃんと他人の話を聞けるのだ。そして、お茶の間にも通じる共通言語で、好きなものは好き、嫌いなものは嫌い、分からないものは分からないと表明することができる。あと、これは唐突かつ感覚的なロジックであるが、Perfumeが近未来を担保しているように、きゃりーぱみゅぱみゅは場所を担保しているように思える。改めて彼女の衣装を鑑みると、観光地っぽさが際立つ。東京タワーや通天閣や厳島神社みたいだし、そこで売られているお土産みたいでも、お祭りみたいでも、ある。
歌詞の世界も独特である。まるで彼女の頭の中を可視化したかのような歌詞は、彼女自身によるものではなく、全て中田ヤスタカの手によるものである。もちろん、彼女の強烈な個性がモチーフとなっているのは自明であるが、これを書ける彼の頭の中は一体どういう構造になっているのだろうか。そして、Perfumeで培ったリフレインも健在である。そのリフレインは、単なる聞き間違えのようでもあるし、駄洒落のようでもある。僕はこれを、若者の間で流行しては消えてゆくわからないことの言語化であると、にらんでいる。にらんでいるだけで、特にこれに続くテキストはない。ポップには精神性がない。まさにファッションモンスターである。

天才は、だいたい気分屋である。
三つの区分、共通して多用している言葉に「キミ」がある。カタカナでキミということは、即ちヤスタカのことかも知れないし、ヤスタカのことを知ろうとするキミ、即ちボクやワタシのことかも知れない。いずれにせよ、cupsuleの中で取り留めもないアイデアを音楽に凝固させようとするキミと、Perfumeの近未来で踊るキミと、きゃりーぱみゅぱみゅの観光地を楽しむキミとでは、意味が違う。
中田ヤスタカは、過去のインタビューの中で「5分の曲って5分でできる」「レコーディングこそライブ」と豪語しているのだが、それもそのはずだ。予め考えてある人は、即答できるし、即決できるし、即パフォーマンスに耐え得る構造を生み出すことができる。締切は、永遠に完成しないもの、つまり考え続ける自分との折り合いに過ぎない。逆説的に、時代と紐づいた本人の気分は、その都度リリースされる新曲の中に封じ込められる。仮に以前と同じことを言っても、三つのキミが感じる世界は三者三様。中田ヤスタカは、いまの気分を上手に流通させることができる希有な気分屋である。

川田十夢

川田十夢

公私ともに長男。コカ・コーラと自動販売機の拡張をはじめました。3月5日-3月11日 ジオラマ試聴機、3月9日 国際GIFアニメアワード、3月11日 WIRED vol.7『近未来は今』特集、3月16日17日 東京芸術学舎 拡張現実入門集中講座
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